橋平礼の電験三種合格講座

過去50年分以上の電験三種の問題を解いて分かった、電験三種は今も昔も変わりません。過去問を解きながら合格を目指しましょう。

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令和3年(2021年) 電験三種 理論 問17

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問17は、コンデンサの問題です。

一つ一つはそれほど難しくないですが、時間のかかる問題です。

解いてみましょう。


 

 図のように,極板間の厚さ$d[m]$,表面積$S[m^2]$の平行板コンデンサ$A$と$B$がある。コンデンサ$A$の内部は,比誘電率と厚さが異なる3種類の誘電体で構成され,極板と各誘電体の水平方向の断面積は同一である。コンデンサ$B$の内部は,比誘電率と水平方向の断面積が異なる3種類の誘電体で構成されている。コンデンサ$A$の各誘電体内部の電界の強さをそれぞれ$E_{A1},E_{A2},E_{A3}$, コンデンサ$B$の各誘電体内部の電界の強さをそれぞれ$E_{B1},E_{B2},E_{B3}$とし,端効果,初期電荷及び漏れ電流は無視できるものとする。また,真空の誘電率を$\epsilon_0[F/m]$とする。両コンデンサの上側の極板に電圧$V[V]$の直流電源を接続し,下側の極板を接地した。次の(a)及び(b)の問に答えよ。

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(a)コンデンサ$A$における各誘電体内部の電界の強さの大小関係とその中の最大値の組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1)$E_{A1} \gt E_{A2} \gt E_{A3},\dfrac{3V}{5d}$
(2)$E_{A1} \lt E_{A2} \lt E_{A3},\dfrac{3V}{5d}$
(3)$E_{A1} = E_{A2} = E_{A3},\dfrac{V}{d}$
(4)$E_{A1} \gt E_{A2} \gt E_{A3},\dfrac{9V}{5d}$
(5)$E_{A1} \lt E_{A2} \lt E_{A3},\dfrac{9V}{5d}$


(b)コンデンサ$A$全体の蓄積エネルギーは,コンデンサ$B$全体の蓄積エネルギーの何倍か,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1)$0.72$ (2)$0.83$ (3)$1.00$ (4)$1.20$ (5)$1.38$

 

 



解答(a):(4),(b):(2)   

(a)
 図のように、直列のコンデンサとして考えることができます。
$C=\epsilon_0 \epsilon_r \dfrac{S}{d}$より、それぞれのコンデンサの容量は

$C_{A1}=12 \epsilon_0  \dfrac{S}{d}$

$C_{A2}=9 \epsilon_0  \dfrac{S}{d}$

$C_{A3}=12 \epsilon_0  \dfrac{S}{d}$

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それぞれのコンデンサ電荷は等しいので、$Q=CV$より、
電圧の比は$V_{A1}:V_{A2}:V_{A3}=\dfrac{1}{12}:\dfrac{1}{9}:\dfrac{1}{12}=1:\dfrac{4}{3}:1$となります。

$V_{A1}=V_{A3}=\dfrac{1}{1+\dfrac{4}{3}+1}V=\dfrac{3}{10}V$

$V_{A2}=\dfrac{\dfrac{4}{3}}{1+\dfrac{4}{3}+1}V=\dfrac{2}{5}V$

 

また、電界は$E=\dfrac{V}{d} $で計算できますので、

$E_{A1}=\dfrac{9V}{5d}$

$E_{A2}=\dfrac{6V}{5d}$

$E_{A3}=\dfrac{3V}{5d}$

となります。よって、
 (4)$E_{A1} \gt E_{A2} \gt E_{A3},\dfrac{9V}{5d}$

(b)
コンデンサ$A$の合成容量$C_A$は

$C_A=\dfrac{1}{\dfrac{1}{12 \epsilon_0  \dfrac{S}{d}}+\dfrac{1}{9 \epsilon_0  \dfrac{S}{d}}+\dfrac{1}{12 \epsilon_0  \dfrac{S}{d}}}$

$=\dfrac{1}{\dfrac{1}{12}+\dfrac{1}{9 }+\dfrac{1}{12 }}\epsilon_0  \dfrac{S}{d}$ 

$=\dfrac{1}{\dfrac{3}{36}+\dfrac{4}{36 }+\dfrac{3}{36 }}\epsilon_0  \dfrac{S}{d}$ 
$=\dfrac{36}{10}\epsilon_0  \dfrac{S}{d}$  
$=\dfrac{18}{5}\epsilon_0  \dfrac{S}{d}$ 
 
コンデンサ$B$は図のように並列のコンデンサとして考えられるので、コンデンサの容量は、それぞれ

$C_{B1}= \epsilon_0  \dfrac{S}{3d}$

$C_{B2}= \epsilon_0  \dfrac{S}{d}$

$C_{B3}= 3\epsilon_0  \dfrac{S}{d}$

合成容量は

$C_{B}= \epsilon_0  \dfrac{S}{3d}+ \epsilon_0  \dfrac{S}{d}+ 3\epsilon_0  \dfrac{S}{d}$

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コンデンサA全体の蓄積エネルギーは

$W_A=\dfrac{1}{2}C_A V^2=\dfrac{9}{5} \epsilon_0 \dfrac{S}{d}V^2$

コンデンサB全体の蓄積エネルギーは

$W_B=\dfrac{1}{2}C_B V^2=\dfrac{13}{6} \epsilon_0 \dfrac{S}{d}V^2$

$\dfrac{W_A}{W_B}=\dfrac{\dfrac{9}{5} \epsilon_0 \dfrac{S}{d}V^2}{\dfrac{13}{6} \epsilon_0 \dfrac{S}{d}V^2}=\dfrac{\dfrac{9}{5}}{\dfrac{13}{6}}\fallingdotseq 0.83$

コンデンサA全体の蓄積エネルギーは,コンデンサB全体の蓄積エネルギーの0.83倍