橋平礼の電験三種合格講座

過去50年分以上の電験三種の問題を解いて分かった、電験三種は今も昔も変わりません。過去問を解きながら合格を目指しましょう。

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令和3年(2021年) 電験三種 理論 問18

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問18は、発振回路の問題です。

これは、知らないとちょっと無理な問題です。

解いてみましょう。


 

 発振回路について,次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(a)図1は,ある発振回路のコンデンサを開放し,同時にコイルを短絡した,直流分を求めるための回路図である。図中の電圧$V_C[V]$として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
 ただし,図中の$V_{BE}$並びにエミッタ接地トランジスタの直流電流増幅率$h_{FE}$をそれぞれ$V_{BE}=0.6V,h_{FE}=100$とする。

f:id:hashi-rei-channel:20211113160704p:plain

(1)$3$  (2)$4$  (3)$5$  (4)$6$  (5)$7$

 

(b)図2は,ある発振回路のトランジスタに接続されている,電極間のリアクタンスを示している。ただし,バイアス回路は省略している。この回路が発振するとき,発振周波数$f_0[kHz]$はどの程度の大きさになるか,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
 ただし,発振周波数は,図に示されている素子の値のみにより定まるとしてよい。

f:id:hashi-rei-channel:20211113160905p:plain

(1)$0.1$  (2)$1$  (3)$10$  (4)$100$  (5)$1000$

 

 



解答(a):(4),(b):(4)   

電流増幅率$h_{FE}$は、ベース電流$I_B$とコレクタ電流$I_C$の比率になります。$h_{FE}=100$より、エミッタ電流$I_E=101I_B$となります。

f:id:hashi-rei-channel:20211113161023p:plain

 $6.8k \Omega$と$3.0k \Omega$より、$9V$の電圧を分圧すると、ベースに加わる電圧は

$V_B=\dfrac{3.0}{6.8+3.0}\times 9=2.755 V$

$V_{BE}=0.6V$より、$1.4k \Omega$に加わる電圧は
$2.755-0.6=2.155V$
これらから、ベース電流は

$101 I_B=\dfrac{2.155}{101 \times 1.4 \times 10^3}=15.24 \times 10^{-6} A$
コレクタ電流$I_C$は$100$倍すれば良いので、
$I_C=1.524 \times 10^{-3}A$
コレクタ電流が流れる、$2.1k \Omega$の抵抗による電圧降下は
$2.1 \times 10^3 \times 1.524 \times 10^{-3}=3.2V$
よって、
$V_C=9.0-3.2=5.8\fallingdotseq 6.0V$

(b)
この回路は、エミッタ接地したコルピッツの発振回路になります。この発信周波数は、次式で表されます。

$f_0=\dfrac{1}{2 \pi \sqrt{L \dfrac{C_1 C_2}{C_1+C_2}}}$

この式に代入すると

 $f_0=\dfrac{1}{2 \pi \sqrt{5.0 \times 10^{-6} \dfrac{1.0\times 10^{-6}\times 1.0 \times 10^{-6}}{1.0\times 10^{-6}+1.0\times 10^{-6}}}}$
$=0.1007×10^6Hz$
$\fallingdotseq 100kHz$

また、同様の発振回路にハートレーの回路があります。
ハートレーの発振回路の周波数は次式で求めることができます。

$f_0=\dfrac{1}{2 \pi \sqrt{C(L_1+L_2)}}$

これらの回路は、マイコンなどで使用する水晶振動子セラロックの発振素子として応用されています。