橋平礼の電験三種合格講座

過去50年分以上の電験三種の問題を解いて分かった、電験三種は今も昔も変わりません。過去問を解きながら合格を目指しましょう。

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令和3年(2021年) 電験三種 機械 問16

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問16は、パワーエレクトロニクスに関する問題です。

解いてみましょう。


 

 次の文章は,単相半波ダイオード整流回路に関する記述である。
 
 抵抗$R$とリアクトル$L$とを直列接続した負荷に電力を供給する単相半波ダイオード整流回路を図1に示す。また図1に示した回路の交流電源の電圧波形$v(t)$を破線で,抵抗$R$の電圧波形$v_R(t)$を実線で図2に示す。ただし,ダイオード$D$の電圧降下及びリアクトル$L$の抵抗は無視する。次の(a)及び(b)の問に答えよ。

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ただし,必要であれば次の計算結果を利用してよい。
$\int_0^{\alpha} \sin \theta d \theta =1-\cos \alpha$

$\int_0^{\alpha} \cos \theta d \theta =\sin \alpha$

(a)以下の記述中の空白箇所(ア)~(エ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

 図1の電源電圧$v(t) \gt 0$の期間においてダイオード$D$は順方向バイアスとなり導通する。$v(t)$と$v_R(t)$が等しくなる電源電圧$v(t)$の位相を$\omega t=\theta_m $とすると,出力電流$i_d(t)$が増加する電源電圧の位相$\omega t$が$0 \lt \omega t \lt \theta_m $の期間においては[ (ア) ],の$\omega t=\theta_m $以降については[ (イ) ]となる。出力電流$i_d(t)$は電源電圧$v(t)$が負となっても$v(t)=0$の点よりも$\omega t=\beta$に相当する時間だけ長く流れ続ける。すなわち,$L$の磁気エネルギーが[ (ウ) ]となる$\omega t=\pi+\beta$で出力電流$i_d(t)$が$0$となる。出力電圧$v_d(t)$の平均値$V_d$は電源電圧$v(t)$を$0$~[ (エ) ]の区間積分して一周期である$2 \pi$で除して計算でき,このとき$L$の電圧$v_L(t)$を同区間積分すれば$0$となるので,$V_d$は抵抗$R$の電圧$v_R(t)$の平均値$V_R$に等しくなる。

 

   (ア)   (イ)   (ウ)   (エ) 
(1) $v_L(t) \gt 0$  $v_L(t) \lt 0$   $\pi+\beta$ 
(2) $v_L(t) \lt 0$    $v_L(t) \gt 0$   $\pi+\beta$ 
(3) $v_L(t) \gt 0$  $v_L(t) \lt 0$    最大  $\pi+\beta$ 
(4) $v_L(t) \lt 0$    $v_L(t) \gt 0$   最大  $\beta$ 
(5) $v_L(t) \gt 0$  $v_L(t) \lt 0$    $\beta$

 

(b)小問(a)において,電源電圧の実効値$100V$,$\beta=\dfrac{\pi}{6}$のときの出力電圧$v_d(t)$の平均値$V_d[V]$として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1)3   (2)20   (3)42   (4)45   (5)90

 



解答(a):(1),(b):(3)   

 

(a)以下の記述中の空白箇所(ア)~(エ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

 図1の電源電圧$v(t) \gt 0$の期間においてダイオード$D$は順方向バイアスとなり導通する。$v(t)=v_R(t)+v_L(t)$とおける。$v(t)$と$v_R(t)$が等しくなる電源電圧$v(t)$の位相を$\omega t=\theta_m $とすると,出力電流$i_d(t)$が増加する電源電圧の位相$\omega t$が$0 \lt \omega t \lt \theta_m $の期間においては$v(t) \gt v_R(t)$なので[ (ア)$v_L(t) \gt 0$ ],の$\omega t=\theta_m $以降については$v(t) \lt v_R(t)$なので[ (イ) $v_L(t) \lt 0$ ]となる。出力電流$i_d(t)$は電源電圧$v(t)$が負となっても$v(t)=0$の点よりも$\omega t=\beta$に相当する時間だけ長く流れ続ける。すなわち,$L$の磁気エネルギーが[ (ウ)0 ]となる$\omega t=\pi+\beta$で出力電流$i_d(t)$が$0$となる。出力電圧$v_d(t)$の平均値$V_d$は電源電圧$v(t)$を$v_d(t) \gt 0$の範囲の$0$~[ (エ) $\pi+\beta$]の区間積分して一周期である$2 \pi$で除して計算でき,このとき$L$の電圧$v_L(t)$を同区間積分すれば$0$となるので,$V_d$は抵抗$R$の電圧$v_R(t)$の平均値$V_R$に等しくなる。

(b)
 出力電圧$v_d(t)$の平均値$V_d$は電源電圧$v(t)$を$0$~$\pi+\beta$の区間積分して一周期である$2 \pi$で除して計算できるので、

$\int_0^{\frac{7}{6}\pi} \sin \theta d \theta=1-\cos \dfrac{7}{6}\pi=1+\dfrac{\sqrt{3}}{2}=1.866$

よって、平均値$V_d$は次のように求められます。

$V_d=\dfrac{100 \sqrt{2}}{2\pi}\int_0^{\frac{7}{6}\pi} \sin \theta d \theta=\dfrac{100 \sqrt{2} \times 1.866}{2 \pi}=42.0 V$